前回で話したこと


・キャラクターは、「キャライメージ」と「キャラクター」が重なりあってできているものである。(キャライメージ/キャラクター論)

・キャラクターには「フラット←→ラウンド」というパラメータ(F-R値)がある。(フラット/ラウンド論)


二つのキャラクター論をまとめてみよう




・記号的部分(キャライメージ、フラット)と非記号的部分(キャラ設定、ラウンド)の、二つの層が重なることでキャラクターは出来ている。

・二つの層の厚みの比率によって、フラット←→ラウンドのどちら寄りか(=FR値)が決まる。
記号的部分が厚ければフラットになり、非記号的部分が厚ければラウンドになる。

・どちらの層を厚くすべきかは、そのキャラクターの物語内の立ち位置や、その作品および作品ジャンルの平均的なF-R値から決められることが多い。
しかし意図的に、期待されるバランスを裏切るような配分でキャラクターが作られ、独自の魅力を持つケースもある。

・キャラクターのさまざまな細部や特徴は、2つの層の両方から影響を受けて作られる。
ひとつの細部と別の細部が違うF-R値を持つこともあり、それがキャラクターの「味」を作ったりする。

・「物語消費/データベース消費」と呼ばれる現代の消費者は、キャラクターの記号的部分を繰り返し消費しているだけと思われがちだが、そうではない。
イメージ/設定、記号/非記号、フラット/ラウンドの異なる2つの層が影響を与え合いキャラクター内で複雑な形が作られることを楽しみ消費している。

現代的なキャラクター作成例 …… ヘタリア


アニメ版ヘタリア公式サイ

1)
「国家」を擬人化する。 ← 大きな物語から小さな物語を作り出す「物語消費」のひとつの形。

2)
それぞれの絵と属性を用意する。 ← 徹底的に「キャラ」のみを作り、フラットに記号化する。

3)
それから彼らを動かすオリジナルの物語を付加する。 ← ストーリー付加によるキャラクターの自立。

4)
「イタリア」は、イタリア共和国を「元ネタ」にしつつ独立したキャラクターとして動きはじめる。

記号的部分と非記号的部分を往き来することによって、一種の錬金術めいたキャラクター制作が行われている。

キャラクターの設定を作ってみよう!


<手順>

1)
8枚の人物写真の中から、設定を作りたい1人を選ぶ。

























2)
「属性」を考えて最低3つ書き出す。なんでもいい、そのキャラの「特徴」として思い浮かぶ記号的部分。

 例)冷血漢、浮気者、優しい、気弱、病弱、頭痛持ち、剣道三段

3)
画像を見ながら、キャラクターがどのくらいフラットかを自分で勝手に決め、下から選んでみよう。
この分け方にぴったりはまらないときは、d)とe)の中間、というような書き方をしてもいい。

(a)きわめてラウンド(悩める完全な主役)
(b)かなりラウンド寄り(あんまり悩まない主役、もしくは最重要な脇役)
(c)ちょっとラウンド寄り(重要な脇役か脳天気な主人公)
(d)ちょっとフラット寄り(やや複雑な性格を持つ脇役)
(e)かなりフラット寄り(コミカルな脇役、極端に脳天気なコメディ主人公)
(f)きわめてフラット(単純明快な脇役)

4)
キャラクターの、物語の中での立ち位置を決め、以下の中から選ぶ。ひとつでなく、複数選んでもいい。
複数の立ち位置を持っているキャラクターはラウンド寄りになりやすい。

(a)主人公
(b)主人公のパートナー
(c)強力な敵対者、ライバル
(d)導師、賢者
(e)主人公にたいする妨害者
(f)協力者
(g)主人公と関わりの薄いキーパーソン

5)
「キーワード」をひとつ設定する。三題噺における「お題」にあたる。 基本的には、こちらのサイトを使って、出てきた言葉から気に入ったものをひとつ選び、レポートに書く。

ランダム単語ガチャ

また、以下の単語サンプルから選んでもいいし、もしぱっと思いついた単語があればそれを使ってもいい。

<キーワードプール>
プロレス、宇宙人、虫歯治療、埋蔵金、コンピュータウイルス、税金相談、ハーゲンダッツ、猟奇殺人、宅配便、 洗濯、クーポン券、カレー、レーザー光線、ベートーベン、ディナーショー、彫刻、ウノ、悪魔、子猫、ハワイ



6)
ここまでで選んだり書き出したりした情報をもとに、「冒険物語の構造」で学んだ方法論で、そのキャラをめぐる「物語設定」を書く。

第五回資料 三題噺の作り方
このキャラはある架空の「映画」に出てくる登場人物、という設定。必ずしも主役ではない。脇役という設定で書いてもかまわない。
キャラクターの名前と、画像がそのキャラクターにとってどんな場面か、も書いていこう。
書いている途中でキャラの特徴が出てきたら、2)に書き加えていこう。

キャラクター設定サンプル




[キャラ属性の書き出し(最低3つ)]

木訥、研究員、思いつめやすい、視野が狭い、真面目、酒が強い

[キャラクターのF/R特質]

(a)きわめてラウンド(悩める完全な主役)
(b)かなりラウンド寄り(あんまり悩まない主役、もしくは最重要な脇役)
(c)ちょっとラウンド寄り(重要な脇役か脳天気な主人公)
(d)ちょっとフラット寄り(やや複雑な性格を持つ脇役)
(e)かなりフラット寄り(コミカルな脇役、極端に脳天気なコメディ主人公)
(f)きわめてフラット(単純明快な脇役)

の中から……

(b)かなりラウンド寄り(あんまり悩まない主役、もしくは最重要な脇役)
(c)ちょっとラウンド寄り(重要な脇役か脳天気な主人公)
の中間。

[キャラクターの機能]

(a)主人公
(b)主人公のパートナー
(c)強力な敵対者、ライバル
(d)導師、賢者
(e)主人公にたいする妨害者
(f)協力者
(g)主人公と関わりの薄いキーパーソン
の中から……

(e)主人公にたいする妨害者
(f)協力者 (g)主人公と関わりの薄いキーパーソン

[物語化のキーワード]

洗濯

[キャラクターの名前]

安本隆(主任)

[キャラクター設定]

モンスター映画に出てくる脇役。

薬品メーカーの研究所で、主人公の所属する研究班の主任をつとめる。
既婚、1歳の娘がいる。
木訥とした善人であり、手を抜かない真面目な研究者だが、それゆえにストレスを溜めやすく、酒でそれを解消している。酒癖は悪い。

新人研究員である主人公を飲みに連れて行ったりする兄貴分であったが
班の研究が思わしくなく、降格されそうになり焦っている。
副所長からのあやしい資料提供を受け、非道な実験に手を染めるようになり
どんどんやつれてゆく。
主人公は彼の洗濯した制服を間違えて受け取り、胸ポケットに残っていたメモを
発見したことから、研究所の暗部に気づくことになる。
研究所の隔離施設でモンスターを培養しているところを主人公に見つかり
「他に方法がねえんだよ!」と怒鳴りながら鈍器を振り回し攻撃してくる。
最後は暴れ出したモンスターを止められず
全てを諦めて研究所の床に座り込みポケットウイスキーを飲みつづける。
が、飲んでいるうち、モンスターを止める手だてを考えつく。
本人は死ぬ気はなかったが、結果的に身を犠牲にしてモンスターの打倒に手を貸す結果となる。
死後、その名誉は主人公の黙秘によって守られた。

このシーンは、安本が所長室に呼ばれ、研究が進まない言い訳をしている場面。





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