設定テキスト①

基本設定


●キャラクター ①



●名前 …… レイ・トパーズ

●属性 …… 気が強い、自己中心的、性格が悪い

●キーワード …… コンピュータ・ウイルス

設定テキスト



主人公は、アメリカの政府に所属する天才プログラマーの女性である。
一方、レイ(このキャラクター)は、自分よりも優秀で同僚からも人気な主人公に嫉妬していた。
ある日、レイは同僚が退勤したあとの職場に侵入。主人公のPCにオリジナルのコンピュータウイルスを感染させた。
このウイルスで主人公のデータを破壊し恥をかかせようとしたのだ。

だが、主人公が直前に作っていたプログラミングデータは、アメリカ全土の電力供給を改善するための超重要なデータだった。(レイは全く知らなかった。)

翌日、すでに完成してたデータを主人公は政府に提出。
政府はそのままデータを電力機関に渡し、ウイルスによって発電所が誤作動。
アメリカ全土が停電してしまう大惨事に。

同僚が必死に復旧を目指すなか、主人公は完成したデータに問題があった可能性を考え、停電の復旧と真実の究明に奔走する。
ちなみに、何も状況が分からないレイは、その日の内に停電に酔って暴徒化した住民によって、金品を奪われて殺害されてしまった。

画像はウイルスを感染させたあとのレイ。一般人と肩がぶつかりトラブルになっている姿。

講評


嫉妬にかられたキャラクター(レイ)の嫌がらせから、トラブルがどんどん拡大し取り返しがつかなくなる、という構想が魅力的。
小さなミスや怠慢が積み重なって巨大なパニックになっていくというのは、カタストロフ系ストーリーの王道の流れ。
その中心のトリガーにこのキャラクターを置いたのは面白い。

画像を通行人とのトラブルで死ぬ直前、という見方をしたのも他になかなかない感じで感心した。
このキャラクターから「余裕のなさ」を読み取るのはかなりユニークな捉え方。

ストーリーとして見ると、主人公の有能感がほとんど伝わってこないのがやや物足りない。
確認を怠りトラブルを起こしたのは事実としても、レイとの対比上、どこかで鋭い判断を見せてほしいところ。

あと、ただ「停電して大惨事」だとシナリオ的には少しだけ具体性に欠ける。
核が暴発する、衛星が落ちてくる、電車が止められず大事故になる(主人公の家族がそれに乗ってる)などといった、「タイムリミット」の設定があるとさらによくなる。

設定テキスト②

基本設定


●キャラクター ②




●名前 …… ダニエル・ウォーカー

●属性 …… 頼れる、頭が良い、優しい、上司上官役職、怖そうだけど親しみやすい

●キーワード …… 満開の桜、エージェント、屋根

設定テキスト



地球が地球外生命体に侵略される物語に出てくる重要な脇役。
対地球外生命体用の訓練アカデミーの上官であり、主人公のいるクラスを担当している。
顔の怖さや指導の厳しさとは反対に優しく、主人公の頼れる上官でよく相談もされている。

内なる欲望を地球外生命体に見破られ、そのさいに洗脳され身体を乗っ取られた。(エージェントになる)
のちに主人公に気づかれ敵対する。

地球が地球外生命体に侵略され始めたときから、地球では十五歳になる年に対地球外生命体用の教育か、今までと変わりのない一般職向けの教育かを選択することになっていた。
主人公は一般教育に進むつもりだったが、家族が地球外生命体に殺害され、地球外生命体用の教育を受けることになった。
そこで出会ったのが上官のダニエル・ウォーカーである。

ダニエルは主人公の父親のように、主人公を支えサポートをしていたが、ある日ダニエルが地球の情報をコピーしているところを目撃し、ダニエルが敵のエージェントだということに気づく。
バレたダニエルは主人公の前から姿を消し、敵になってしまった。
主人公はいつもダニエルに相談していた、本来なら満開の桜がきれいな思い出の場所で、建物の屋根の上で空を見上げ、涙を流していた。

このシーンは主人公がダニエルに相談している場面。

講評


今年のキャラクター制作実習全体に言えることだけれど、キャラクターを「重要な脇役」にすることで、主人公とのあいだに緊張関係を作る手法が成功している人が多かった。
このテキストもその代表的なもののひとつ。

ストーリー全体に「地球外生命体との戦い」という明確な軸を作ることで、ダニエルの裏切りがシリアスなものになっているのが印象的。
主人公が家族をなくしている、というのがポイントで、そこに入り込んでくる父親的な存在としてのキャラクターが裏切っているからこそインパクトが生まれる。
定番といえば定番だが、感情をゆさぶるポイントをきっちり押さえていることは称賛されていい。
屋根の上で夜空を見上げてダニエルを思い泣く、という場面は映像がくっきり思い浮かべられるシーンで、これをイメージできた時点で勝ちといえる。

ここから先は、「地球外生命体」と呼ばれるのみの敵のイメージを、より具体的にアイデアをぶちこんで造形していくことで、シナリオはどんどん本格的になっていくだろう。

設定テキスト③

基本設定


●キャラクター ⑤





●名前 …… エルシー・タイナー

●属性 …… 忠義、冷静、足がはやい

●キーワード …… 育成、戦闘、殺人

設定テキスト



近年、裏社会で流行の「コンテスト」と呼ばれる催しに(「ポーン」として)参加する少年。

「コンテスト」とは主従関係を作り、主である「キング」と従者である「ポーン」の2名で参加する。
そこで「ポーン」は命をかけて殺し合う。優勝者には莫大な賞金が贈られる。

主人公は借金をかかえた青年。(エルシー同様に)「ポーン」として動く。
エルシー・タイナーの「キング」と、主人公の「キング」は昔よく一緒に働いていた。
そこで、「コンテスト」に出場するにあたって、エルシーと主人公はよく対戦相手となって訓練している。

主人公は心優しい性格で本当は出場したくない。
忠誠心が強く、何を考えているのかわからないエルシーが何故そうなってしまったのかが気になる。
一方、エルシーは特に何も感じない。戦う日が来ればただの抹殺対象。

「コンテスト」までの日々の、2人の関係性、心情の変化がポイントとなる映画。
(最後のほうで、エルシーは死ぬ。主人公の青年が、以前のエルシーのような人間になる。)

講評


まず、このキャラクターを中性的な男の子と見立てたのが面白い。今までに一人もいなかった設定である。
次に、残酷な戦闘大会「コンテスト」という設定が緊迫感があるポテンシャルの高い設定。
2人組で戦うというのもユニークである。

やや惜しいのは、この設定の中で「キング」の役割がほぼないように見えること。逆にそこが伸びしろである。
なぜポーンはキングのため戦うのか。キングは何のためにいるのか。
そのあたりが、エルシーの性格設定と結びついていくと、とたんに完成度が増していくだろう。

設定テキスト④

基本設定


●キャラクター ⑤





●名前 …… エマ・テイラー

●属性 …… 強者、変化、頭脳明晰、一匹狼

●キーワード …… 悪魔、子猫

設定テキスト



舞台--

悪魔を倒すことができる力を持つ人のいる世界。
通常7才までの間に発現するその能力は、遺伝によるものが大きい。
能力は力によって器の大きさが異なり、いつまで使えるかに相当する。
能力者と一般人の結婚が増えたり、タイプの違うもの同士での結婚も少なくなかったことから、だんだん能力を宿すものの総数と、強い力を持つ者の数が減っている。
能力を持っていることは、一般人には秘密。基本チーム戦。

ストーリー・キャラクターについて--

10才で遅れて能力が発現した主人公。両親は原因不明の事故で赤子の頃に亡くなり、施設で暮らしていたため、発現に気が付かなかったが、学校帰りに悪魔に遭遇し、他の能力者に出会ったことで、自分の力について知る。 関係者に、主人公の持つ力は特別強いものだといわれる。

能力者として活動、能力強化をしてゆく主人公。
ある時強い悪魔と出会い、負けそうになった瞬間、一匹の猫(白い毛、青い目)が現れ、悪魔を撃退する。
すぐ去ってしまったが、その後も何度か現場で出会う。
新学期、クラスにエマ・テイラーという金髪碧眼の少女が転校してくる。
なぜか主人公に強く当たるエマに悩んでいたが、ある日戦闘中にエマと遭遇する。危ない、逃げて!という主人公を尻目に、エマは一瞬で悪魔を倒す。

白猫はエマの能力のひとつで変化した姿。
一人で活動するエマを心配しながらも、その強さに嫉妬する主人公。
たびたび共闘することが増え、少しずつ打ち解ける。
最後は力を合わせて1人の悪魔(物語のカギ)を倒す。

講評


しっかり組み立てられたボーイ・ミーツ・ガールの物語で、設定のバランスが取れている。
孤高の超能力変身美少女という、盛り過ぎなぐらいの設定だが、主人公と対になることで物語として均衡が取れる。
他のサンプル同様、イメージがしっかりした重要な脇役(ヒロイン、賢者、ラスボス、ライバル、裏切り者)がいることの強みがよくわかる。

ただこのテキストの場合、全体的にまとまりがよいのだが、突出したイメージにやや欠けるかもしれない。
具体的な鮮烈な場面や、エマ、主人公、悪魔のどれかに強い具体的なイメージが欲しいところ。
なかでも悪魔について掘り下げた設定を加えると、一気によくなるだろう。

設定テキスト⑤

基本設定


●キャラクター ⑤





●名前 …… メイ・ホワイト

●属性 …… ませた子供、ツンツンしている、かわいいものが好き、猫っぽい、雪国出身

●キーワード …… ノアの箱舟、狼男、未開の地

設定テキスト



狼男の主人公と行動をともにする重要な脇役。

物語の舞台となる雪国で生まれ育つ。
年齢のわりにませた言動・思考をする賢い子供。
仲の良い主人公に対してはトゲのある発言をするが、外面はよく要領がよい。
カラフルでかわいらしいものが好きという年相応な一面も。

舞台となる辺境の雪国で近々大雪が降り、村が壊滅するとのお告げがあった。
人々は"ノアの箱舟"と称した船を用意し未開の地を目指す。
村の隅で狼男とバレないようにひっそりと暮らしていた主人公は、お告げの内容も箱舟のことも知らされなかった。

それに気づいたメイは主人公に箱舟のことを知らせ、一緒に乗るよう誘う。
主人公は自分が乗ってよいものかと戸惑うが、人間と同じ扱いを受けられたことを嬉しく思いメイに同行する。

2人が船に乗ると、村人のあいだで「狼男が乗っている」という噂が。
排除しようと息巻く村人たちから隠れるように出港を待つ2人。ときにメイが持ち前の賢さで機転をきかせ、バレるのを回避する場面も。

出港の日までなんとかバレずに乗り続けられたものの、出港日はくしくも満月。
狼化してしまった主人公と、阿鼻叫喚の村人たちのなか、メイは主人公を守ろうと近づくが、村人たちの攻撃により正気を失いかけた主人公はメイに襲いかかる。
間一髪のところでメイは助かるも、主人公は「自分は人間と同じ世界にはいられない」と悟り、船を降り大雪のなかに消えてゆくのだった。

画像のシーンは、主人公とメイが出会ったときの回想シーンである。

講評


人狼ゲームを思い出させるような、ユニークで本格的な物語設定が素晴らしい。
ひとりだけ異質な主人公をただ一人かばう少女、というだけで、もうエマの善性が立ち上がってくる。
エマ本人の特徴もしっかり設定されているが、物語の中の位置づけがなによりグッド。
悲しい結末も説得力がある。

完成度が高くこれといって注文はない。
あえていえば、満月に変身してしまうという設定をもうすこし突き詰めて、狼男とはなにか、みたいなところを掘っていけると深みがある物語になるだろう。

設定テキスト⑥

基本設定


●キャラクター ⑥





●名前 …… アラン先生

●属性 …… 臆病、神経質、朝食は必ずトーストとゆで卵を食べる、押しに弱い、裏切る、話は聞いてくれる

●キーワード …… 砂時計

設定テキスト



主人公が通う小さい病院の先生。頭が良く優秀だが押しに弱く臆病な性格ゆえに小さい病院勤務となった。
多くの人が主人公の話を信じてくれないなか、話を真面目に聞いてくれるため主人公の相談相手になっている。
安定を求める性格で、ルーティーンを守って生活している。

「宇宙人を見た。やつらが三ヶ月後にこの村を乗っ取りに来る」という主人公の話を真面目に聞いてくれ、宇宙人から村を守るために奔走する主人公たちに助言をするなど協力をしていた。
村の人間が宇宙人の存在に気づき、世界を守るために1つの村を犠牲にするという計画のじゃまになると考える政府に、大きな都市の病院への避難と引き換えに主人公を始末するよう命じられる。

主人公の殺害を試みるが主人公の友人に妨害される。
捕らえられた際に真横に落ちて割れた、学生時代から使っている砂時計を見て誰かを救いたいと勉学に励んでいた自分を思い出し、主人公に政府が裏で計画を操っているという、核心に迫るヒントを与える。

講評


キャラクターの性格付けが細かくできていて、かつイメージ的に説得力がある。
なので、物語の中で協力者であり敵対者でもあるという複雑な役割を与えられても、すんなりと役割に溶け込んでいる。

この話とこのキャラクターだと、主人公ではなく、このアラン先生が主役になってもいいほどだ。
圧力と良心のあいだでダブルバインドになる複雑な心情は、主人公よりシリアスであり深みがある。主人公が描写されていないので当然だが。

唯一のキズは、キーワードである砂時計の扱いがやや唐突なところだろうか。

設定テキスト⑦

基本設定


●キャラクター ⑦





●名前 …… 朝城りお

●属性 …… 話すのが苦手、表情が出せない、おしゃれは好き、かわいい

●キーワード …… スマホ

設定テキスト



この春、高2になった主人公は「彼女が表情を変えたところをだれも見たことがない」と言われている朝城みおと同じクラスになり隣の席になった。
噂通り彼女はまったく表情を出さなかった。

しかしとある日の放課後。帰宅した彼女の机の上にスマホが置いてあった。
主人公は彼女のものらしきスマホを職員室に届けようとスマホに手を伸ばすと、スマホのホーム画面が開いた。
そこには彼女とは思えないような笑顔を浮かべている彼女が写っていた。

そのとき「なにしてるの?」とふるえた声が聞こえた。振り向くと顔を真っ赤にした彼女がいた。
彼女はものすごいスピードでスマホを取り戻そうとする。
主人公はスマホにうつっていた彼女の顔が忘れられず思わず「スマホに写っていたのって朝城さん?」と聞いてしまった。
すると彼女は振り返り、鬼の形相をして「かってに見るな!」と怒鳴って去っていった。
主人公は何が起きたのかわからず、ぽかんとしてしまった。
(この後、彼女は泣きます。)

講評


まず、このキャラクター画像から、「普段は無表情な少女」というイメージを導き出したのがユニーク。
いままで書かれたテキストのほとんどはコメディ色の強い少女、というイメージだった。

画像中に映っているスマホをキーアイテムに持ってきたところも感心する工夫。
学園恋愛ものの始まりとして、過不足なくよく出来ている。
それだけに、もう少し先の展開まで見てみたい(彼女の秘密を知りたい)気がする。

設定テキスト⑧

基本設定


●キャラクター ⑧




●名前 …… 島田秀

●属性 …… 賢い、医者、散財

●キーワード …… 医者、自分自身、自由

設定テキスト



SF映画に出てくる脇役。
表向きには開業医ということになっているが、その実「人を死んだことにしてくれる」と一部の界隈で有名な闇医者である。

犯罪などで、もう表舞台に戻れない悪人の死を偽装することで多額の利益を得ている。
あんがい需要は高く彼自身もビジネスと考え、罪悪感などはない。
彼はギャンブル好きであるため、進んで偽装依頼を受けようとする節がある。画像は映画の冒頭、依頼を受けるシーン。

ある日、島田のもとに数人の死の偽装依頼が届きそれを受ける。
その依頼者は島田を気に入ったようで頻繁に依頼が届くようになり島田の懐は潤っていくが、謎の依頼主の、目的が不明な大量の依頼にだんだん恐怖を感じるようになる。

主人公は島田に死を偽装されたうちの一人である。
社会に疲れ、遺書を書いて自殺しようとしていたところを何者かにさらわれ、島田のもとで麻酔を打たれる。
次に目を覚ますと、そこはただの廃墟で、なにもなく、主人公は家に帰ろうとするが、そこには既に「自分」が暮らしていた。

主人公と島田は立場は違えど、2人とも同じクローン実験計画に巻き込まれていく。
島田がただの依頼として、大量に受けた謎の人物からの依頼によって死んだことにされた人(主人公含む)は、目を覚ましたあと、その立場を自分のクローンに乗っ取られていた。

死を望むほどだった自分と、人生をうまく生きていくクローンを比べ、主人公は人生を考える。
一方島田は、自分が巻き込まれていることにようやく気づき、依頼を全て断ろうとするが許されず、追われる身になる。
また、主人公のように死んだことにされた人々にも情報が漏れ、さらに逃げ回る。
そんななかで主人公にばったりと出くわし、クローン実験を止めることを目的として協力することを約束する。
ラストは島田の独断でクローン体を回収処分したのち、自首。
殺人犯として、刑に服す。

講評


構想力が光っている設定。
闇医者というキャラクター設定がまず面白いし、それにクローン実験というアイデアを組み合わせたところが秀逸。
アイデアの出し方や展開に、プロフェッショナルな本格感がある。

島田というキャラクターも、物語のシリアスさやスケール感にちょうど合ったラウンドさ(複雑さ)を持っていて、ぴったりはまっている。
あとは、実験を仕掛けている黒幕の組織について情報を詰めていけば、ぐっと面白くなるはず。





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